先日来院された悪性黒色腫(メラノーマ)の一例をご紹介しようと思います。
悪性黒色腫(メラノーマ)とは
色素(メラニン)を作り出す細胞(メラノサイト)がガン化した腫瘍です。
皮膚と粘膜の接合した部分に発生することが多く、口の中の発生が多い腫瘍です。
今回ご紹介する症例も、口の中にできたメラノーマの一例です。
高齢のダックスフンドで、他の動物病院で歯茎に膿がたまっているといわれ無麻酔の状態で膿を絞り出す処置をしていたそうです。
しかし、一向に良化する様子がなく当院に転院してきました。
口の中をよく見てみると、できものができており細胞の検査をすることにしました。
細胞の検査は、できものに針を刺して細胞を採取して、顕微鏡で観察します。
針を刺すので痛みを伴いますし、犬が嫌がったり怖がったすることが予想されます。
なので、当院では鎮静剤を使用し少し眠ったような状態で検査を行います。
鎮静剤を使用することで、犬が痛みや恐怖を感じずかつ、暴れる危険もなく安全に確実な検査を行うことができます。
そこで、採取された細胞がこちらです。
細胞分裂が活発で、細胞の中に顆粒状に濃く青く染まった部分が見えるのが悪性黒色腫(メラノーマ)の特徴です。
細胞を検査した結果、膿がたまっているのではなく悪性黒色腫(メラノーマ)であることが診断できました。
メラノーマは、進行が早い腫瘍です。発見されたときにはリンパ節や肺に転移している可能性があります。
治療は、主に外科的に摘出することですが、正常な部分を含め広範囲に切除する必要があります。場合によっては、顎の骨ごと切り取る必要も出てきます。
それでも、再発率が高く予後の悪い腫瘍です。
この症例では、犬も高齢でありQOLを考え積極的な治療はせず経過を観察することになりました。
当院では、犬や猫が痛い思いや恐怖、不安を感じないように配慮しながら、必要に応じ鎮静剤や麻酔薬を使用し検査や処置を行っています。
そして、検査の結果に基づいて治療の方針を立て、飼い主さんと犬や猫たちにとってより良い時間が過ごせるよう努めています。