当院では、治療の甲斐亡くなってしまった動物の剖検をお願いすることがあります。
剖検とは…
死因,病変などを追究するために,死体を解剖,検査すること
診断が確定しないうちに死亡してしまったり、診断に基づき回復が見込める治療を行ったが死亡してしまった場合、剖検をお願いすることがあります。
先日、あった剖検の症例をご紹介したいと思います。
高齢のミニチュアダックスフントで、咳が出るという呼吸器症状で来院しました。
超音波検査とレントゲン検査で心臓のそばに何か腫瘤物(できもの)がありそうだということが分かりました。
正常な胸部レントゲン | 今回の症例のレントゲン |
しかし、腫瘤物の正体がわからないまま数日後に急死しました。
死後、飼い主さんの承諾を得て剖検させていただきました。
剖検の結果、心臓の基底部(右下図参照)に腫瘤物がありました。
腫瘤物の一部は破裂していて胸の中に血液が貯留していました。
剖検の写真があります、モノクロ加工していますが苦手な方はご注意ください。
腫瘤の細胞診の結果、異型性の高い(悪性度の高い)腫瘍が示唆されました。
腫瘍の細胞を採取し、顕微鏡で観察した。
以上の検査結果から、心臓に出来た血管肉腫が破裂し、大量出血を起こし急死したと結論付けられました。
血管肉腫とは、血管内皮(血管の一番内側の層)に出来る非常に悪性度の高い腫瘍です。
高率で転移することも多く治療の施しようがないことから、亡くなる直前まで食欲もあり、最期まで飼い主のもとで過ごせたことは良い最期だったと思われました。
当院の方針として、
診断が確定されないまま死亡した場合、診断に基づき回復が見込まれる治療・手術を行ったが死亡してしまった場合などに、剖検をお願いすることがあります。
なぜ亡くなったのか、選択した治療法は間違っていなかったのか、何かできることはもっとなかったのか。
剖検をすることで、わかることがたくさんあります。
それによって、飼い主さんご自身の気持ちの整理がついたり、治療に納得してもらえることもあります。
こちらも、これから同様の症状や病気の動物たちの今後の診断治療に役立てることができます。
剖検は、費用はいただきません。
かかる時間は1~2時間で、体はきれいにしてお返しします。
大切な家族の体に、死後もなおメスを入れることに抵抗がある方もおられるでしょう。もちろん、そのような飼い主さんにまで無理強いするものではありません。
もし、ご理解いただけましたらご協力お願いいたします。
また、剖検に関心があるが、なかなか最期の時には言い出せないことも多いと思います。健康な時でも、剖検に関する意思を獣医師にお伝えいただければ、もしもの時にはその意思を尊重させていただきたいと思います。
この記事に関して、ご意見やご質問がありましたらこちらからお問い合わせください。