今回は、狩猟犬の創外固定法の一例をご紹介します。
当院がある西伊豆では、狩猟シーズンになると地元の方だけでなく、県外から訪れた猟師の方々がパートナーになる狩猟犬とともに山に入り、イノシシやシカの狩猟が行われています。
イノシシやシカも、猟犬に追われ時には、反撃をすることがあります。
毎年、多くの狩猟犬がけがをして当院を受診します。
皮膚を切られた程度の軽傷から、お腹から腸が出てしまうような重症まで、状態は様々です。
今回紹介する症例は、イノシシ(おそらくメス)に噛まれて骨折してしまった症例です。
イノシシは、オスには大きな牙があり突進してきて皮膚を切り裂くような傷が多いです。
しかし、メスは大きな牙を持たないため咬みついて攻撃してきます。
そうなると、皮膚に傷ができるだけでなく骨まで折れてしまうこともあります。
そして、皮膚の傷は骨にまで達していることがほとんどです。
今回の症例も、皮膚の咬み傷は骨まで到達し、細菌感染を起こしている可能性が高い骨折でした。
この様な骨折は、『開放骨折』といいます。
開放骨折では、プレートなどのインプラント(体中に埋め込む素材)は使えません。
もし、感染を起こしていた場合インプラントがあることで細菌感染を悪化させてしまうことがあるからです。
そのため、今回の治療では創外固定法という方法を取りました。
創外固定法とは、文字通り「創」傷の外側に固定する器具を付けて骨折を固定する方法です。
ここからは、多少生々しい画像が出てきます。加工はしていますが苦手な方はご注意ください。
術前に、きれいに毛を刈り、噛まれた傷を洗浄します。
骨折した骨の両端に、整形外科用のドリルでピンを打ち込み、両サイドにバーと取り付けて仮止めします。
そして、レントゲンを撮りながら骨折面が合うように調整していきます。
骨折面があったら、さらにピンを追加し固定します。
←整復前
整復後→ |
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ポータブルレントゲン装置を使い手術室で撮影します | ←整復前
整復後→ |
最後に、術創と取り付けた固定器具を包帯で保護して手術は終了です。 |
術後、開放部(咬み傷)を日々洗浄し、感染をコントロールしながら経過を見ます。
こちらは、術後3日目の歩く様子です。
手術をした足を使っています。
今回は、今まででもうまくいった症例です。
今後は、骨のくっつき方を見ながら少しずつピンを抜いていきます。
固定具のすべてが取れれば、これまで通り猟に出て、イノシシやシカを追いかけられるでしょう。
狩猟犬は、怪我が多く、骨折などの大怪我で手術が難しいと判断され、狩猟犬から引退せざる負えないとされることもあります。
しかし、当院では、また狩猟犬として走ることができるよう治療に取り組んでいきます。
その他症例は、こちらからご覧ください。