猫の皮膚移植と肉球移植の症例を紹介します。
使用している画像に一部生々しいものがありますので、苦手な方はご注意ください。
5月上旬、野生動物用の罠にかかったと思われる猫が来院しました。
前足先の一部が壊死し、皮膚が剥がれ肉もえぐれて、一部指の骨が露出した状態でした。
そこで、壊死した皮膚や骨を除去しする処置を施しました。
この時点では、患部の表面が細菌感染を起こしていること、表面の壊死組織が脱落しきっていないため、
表面を毎日洗浄し、患部を乾かさないように覆い湿潤療法で正常な肉芽組織が再生するようしばらく治療することになりました。
湿潤療法は、昔のように傷をなるべく乾かして治療するのではなく、乾燥させないように保護しながら、治癒を促す方法です。(キズパワーパッドと同じ原理です)
治療開始6日後 | 治療開始15日後 | 治療開始23日後 |
日を追うごとに、徐々に感染が収まり、壊死組織が脱落し正常な肉芽組織が再生していく様子が見られます。
湿潤療法により、少しずつ脱落していた皮膚も周りから再生してきましたが、これだけ広範囲に脱落した皮膚が完全に再生し、表面を覆うまでには時間がかかりますし、難しいことです。
そこで、次の治療のステップに進みます。
それが皮膚移植です。
皮膚移植は、自身の皮膚を使って移植を行います。脇腹などの皮膚のたるみが大きな余裕のある部分の皮膚を切り取って持ってきます。
欠損部分に移植した皮膚 元の健康な皮膚と縫い合わせるため、健康な皮膚を一部はがし再縫合した。 |
他の部位から切り取った皮膚 欠損部分に合わせ形を形成、皮下のいらない脂肪組織をはぎ取りスリットを入れる。 |
移植する皮膚は、皮下脂肪などがついていると移植した先とのくっつきが悪くなるため、皮下脂肪をこそげとり適切なサイズに形成します。
スリットを入れるのは、皮膚の下に滲出液(傷口から染み出す体液)がたまらないようにするためです。滲出液がたまるとつきが悪くなります。
最後に、引き続き湿潤療法をするためキズパワーパッドのような被覆材で覆い、腕を動かすと移植した皮膚が動いて定着しにくくなるので圧迫固定します。
術後は、数日おきに患部を清潔に保つため、洗浄と被覆材の交換を行い経過を見ました。
続く
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